【レポート】地方創生シンポジウムin糸島 〜新しい働き方で変わる糸島の未来〜

会場-オープニング1

「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」プロジェクトの締めくくりとして、2月27日(土)に糸島市で開催された「地方創生シンポジウムin糸島」。
新たな仕事の場づくりと糸島の風土に即した働き方、そして糸島の未来づくりについて話し合われました。

基調講演
「地域を盛り上げる、デザイン的思考。」

ライフスタイル雑誌「自遊人」の編集長 岩佐十良さんによる基調講演からプログラムが始まります。
雑誌制作だけでなく、食のプロデュースや農業問題のアドバイザーなども務める岩佐さんは、2004年に事業の拠点を東京から新潟県南魚沼に移し、2014年には自ら全デザインを担当したライフスタイル提案型の複合施設「里山十帖」をオープンし、情報発信としてもこの施設を活用しています。
そんな岩佐さんから、まず新潟へ移住したきっかけと、そこから糸島という場所をどのように見られているかというお話をして頂きました。

岩佐十良-講演4

「雑誌と合わせてお米の販売もしていたんです。そこからお米の販売の現場を見たり、自分で米作りもしたかったというのが南魚沼へ移住するきっかけの一つです。
そしてもう一つは仕事とプライベートのバランスをとりたかったこと。東京時代は寝る間も惜しんで雑誌を作っていたので、時間に余裕が無かったんです。
特に多くの時間を費やしていたのが、仕事の打ち合わせでした。南魚沼に移ってからはその時間を大きく節約できる事で時間をたっぷり持てるようになっています。

南魚沼は本当に山の中、絵に描いたような中山間地で不便な点も多い。それに比べて糸島は自然豊かでありながら、福岡市に近く巨大な労働人口市場を持っている。それを活かすことですごく可能性がある場所だと思います。」

里山十帖・リアルメディアの必要性について

岩佐十良-講演1

「新潟や南魚沼の暮らしを発信する、そしてお客様にいろんな体験をしてもらうというテーマで運営しています。
この施設を私たちは『リアルメディア』という考え方で『新潟』『南魚沼』『里山十帖』をセットでPRするということに使っています。」

岩佐十良-講演9

「里山十帖は2014年5月にオープンして、わずか3ヶ月で稼働率90%を達成していますが、実は広告などのPRは一切出していません。来て頂くお客様に自分たちのやりたい事をきちんと伝えていって、そこから徐々に口コミで良さを広げていくという形をとっています。
これは”共感マーケティング”と言って、スマートフォンやSNSが普及してきた今の時代に合わせています。」

岩佐十良-講演11

「ターゲットを絞ったピンポイントなマーケティングを行うことによって、確実に情報を伝えて伝播をさせる、これによって多数のお客さまに来て頂けるようになっています。」

地域のセンターハブとしての場作り

岩佐十良-講演6

「里山十帖で提供する料理は野菜がメインです。これはお客様においしい野菜を味わって頂きたいということと、あとは地域の野菜を使うことで観光業と農業を活性化できるという考えにもとづいています。
食べ物に限らず、素朴な田園風景やなんでもない景色も都市に住む人にとっては、価値のあるものになります。今まで地元で見過ごされてきたものも私たちが再編集してプロデュースすることによってラグジュアリーを感じて頂く。そうすると地元の住民の人が地元のものに改めて価値を感じてくれるようになる。これがふるさとへの自信に繋がるとともに、新しい産業が生まれていきます。

パネルディスカッション
「市民・移住者が共に創る糸島の未来」

ディスカッション-4人2

後半のプログラムは「市民・移住者が共に創る糸島の未来」と題して、個人の新しい暮らしや働き方を実現するテレワークの可能性、そこから地域の人々が幸せに暮らしていくためにはどのようなことが必要か、といったテーマでパネルディスカッションが行われました。
そこで見えてきたキーワードは「情報技術を使った利便性」「リアルな場」そして「人々の交流」でした。

女性の働く環境作り、仕事や人生を語り合える場となること

ディスカッション-佐藤2

「女性の声を糸島のあらゆる暮らしの場に反映させようと、今回『糸島女性支援プロジェクト』を発足しました。そして、このテレワーク推進事業の一環で糸島市の中心部に『ママトコワーキングスペース』という場を試験的に設けました。ここは働くママさんを支援するための施設で、仕事をするスペースだけでなく、子供を遊ばせたり談話したりもできるようにしました。オープンデイの3日間は1日約20人が来場し、非常に盛り上がりを感じました。
ここに来られる方たちは子育ての事だけでなく、自分がどんな生き方や働き方をしたいか話をしたいという方が多く、自分と同じ状況にある人に出会いたいというニーズがあることもわかりました。」
佐藤倫子氏 (糸島女性支援プロジェクト事務局・福岡教育大学非常勤講師)

テレワークは人生の選択肢を増やす

ディスカッション-宇治2

「テレワークとは、『tele(離れたところで)』『work(働く)』の造語。
2000年にテレワーク協会ができて以降、情報通信技術の進展に連れてこの働き方は徐々に浸透してきています。

テレワークを活用することで、通勤時間の節約や家族と過ごせる時間も増える。介護や子育てに関わりたいお父さんたちの働き方にも新しい選択肢を与えることができます。
教育機関や医療環境など糸島の恵まれた点を全国に発信し、人が幸せになれる場所としての地域づくりを進めることが重要です。」
宇治則孝氏 (日本テレワーク協会会長)

ベンチャーの力で地方にイノベーションを起こす

ディスカッション-秋吉3

「日本では今労働人口が減っていて、2050年には今の3分の2にまで減っていくと言われています。その中で働けなかった人が働けるようにすることや、より生産性を上げるための多様な働き方を提案するということが我々クラウドソーシングやテレワークに求められていることだと思っています。
地域が盛り上がっているところには月形市長のように熱意のある首長がいることが条件であり、かつ佐藤さんのように主体的に事を起こそうという市民の方がいる、こういう方たち一人ひとりが主役になることが大事なのだと感じています。」
秋好陽介氏 (ランサーズ株式会社 代表取締役社長)

若い人が働くための環境と場づくり

ディスカッション-月形1

「糸島では働く場が少なく、職場を求めて若年層が市外に流失して人口は減少している状況です。
企業誘致という形で職を作るための取り組みを進めてきましたが、さらにテレワークという取り組みを新しい働き方、そして糸島の地域での働き方として是非提案させていただきたいです。またママトコでもニーズがあるのもわかりましたし、今後『リアルな場』としての活用を更に進めていきたいと思います。この取り組み全体を通して糸島でしかできない働き方として次に繋げていきます。」
月形祐二氏 (糸島市市長)

糸島は人と人がすぐにつながる場所

ディスカッション-坂口2

「地方創生の時代の中で、自分の未来は『モデル』という他人のものさしではなく『スタイル』という自分の価値観で考えるべきであると思います。
そんなスタイルを持った「スタイリスト」が全国各地で活躍している、そうなってきた時にスタイリスト同士が交流し合えるような場ができれば良い、場作りや機会づくりとして行政の力も必要です。『糸島スタイル』としての取り組みの第2幕を、今日からぜひ始めていきましょう。」
コーディネーター:坂口光一氏 (九州大学教授)